heptagon #2

04.07 19:00

写真を始めたばかりの頃、あるカメラマンに「写真を撮る上で一番重要なことって何ですか?」って聞いたら、「機材だよ。」って言われてひどくドライな印象を受けて、ショックだった記憶がある。この答えが本心だったのかはわからないが、その答えにショックを受けた当時の自分を思い出すと笑える。すごい質問をしたものだ。「あなたはどうして生きているのですか?」と聞いているようなものだ。そんな質問に対して「機材だよ。」とは実にマトモで優しい答えだったな…。

CONTAXのT3っていう、コンパクトなフィルムカメラがバカ売れらしい。今は中古で15万くらいする。僕が新宿の中古屋で買った時は2~3万だった。その時接客してくれた店員さんが暑くもないのに異常なくらい汗をかいていたのを覚えている。ボディの色が黒とシルバーがあって、色々と説明してくれてたんだけど、その説明は上の空で、汗でビシャビシャになった店員のシャツと、さらに額から滝のように流れ落ちる汗ばかりを見てしまっていた。そのカメラ(どのカメラだ!)が15万とは…。何てことだ。T3は確かにすごく良いカメラだけど、皆んなが本当にこのカメラの良さを知って飛びついたのだろうか。何とも不気味な話だ。いっそのこと再発でもすればいいのに。

そんな具合で、人の好みっていうか流行みたいなのって、本当にコロコロ変わっていくし、良く分からない。それでも冬が終わって春が来た。嬉しいことだ。春は桜でも撮ろうか。毎年家の近所で気楽に桜を撮る。ただ撮りたいように撮ると、当たり前にように前の年に撮ったモノと殆ど変わらない写真になっている。それがつまらないから、ちょっと違くしてみようとするけど、結局最初に撮った毎年同じ写真が結局一番良いと感じる。それでも今年も撮ってしまうんだろうなって思う。何の為に?ハッキリとは分からないけど、ただのちょっとした楽しみだ。

先日久しぶりに会った3人の友人達。2年前に僕が個展をさせて貰ったギャラリーで彼らの展示があるというので、足を運んでみたのだ。そこで彼らの作品を眺めながら、そういうのに近からず遠からずな会話をしていたら電車がなくなってしまった。会場まで電車で来ていた3人は僕の車にギュウギュウ詰めになって、極論ばかり言うちょっと偏屈な家主が待つ宿泊先を目指した。ギャラリーで始まった会話はまだ熱を帯びていた。それが冷める気配はなかった。車内の人口密度の上昇と会話の熱で、少し暑くなったので窓を開けると、まだ風は少しだけひんやりとしていた。途中で何度か道を間違えてしまった。車内では延々とブルーハーツが流れている。いつもより静かに感じる街を、敢えていつもより少しユックリ車を走らせる僕がいた。写真は楽しい。

Profile – MURAKEN(ムラケン)
ミレニアム以降のシーンにおいて、多くのスケートエピックを記録してきたフォトグラファー。トリック写真だけでなく、それに付随する心情写真やランドスケープにも定評がある。現在は専門誌の他にカルチャー誌、ファッション誌、そしてエキシビション開催やフォトブック製作など、活躍の場は多岐にわたる。

 

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